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スピロノラクトン内服で高カリウム血症となった場合、カリウム降下剤を飲んでまで継続すべき?

執筆者の写真: kenji kawarakenji kawara


心不全患者さんへのスピロノラクトン投与が予後改善効果を示すと報告されて久しいですが、同時に、スピロノラクトン投与中に副作用として高カリウム血症に遭遇することは良くあることだと思います。


その際、果たして経口カリウム吸着剤でカリウムを低下させてまでスピロノラクトンの内服を継続するのが良いのでしょうか? あるいは素直に中止すべきでしょうか?


※実例をもとに、架空の症例提示をしています


【症例】

73歳女性

慢性心不全(HFpEF)の診断あり

EF=60%

心血管イベントの既往歴なし

K=6.2mEq/L



【既往歴】

COPD、肺高血圧症、糖尿病



【内服歴】

スピロノラクトン、エナラプリル、メインテート

ジャヌビア、メトグルコ

スピリーバ

レルベア



【Clinical Question】

スピロノラクトン内服で高カリウム血症となった場合、カリウム降下剤を飲んでまで継続すべき?



【私的結論】

  • そもそも、HFpEFに対するスピロノラクトン投与の有効性は確立されていないため、適応判断を慎重に行う必要がある


  • 血清カリウム値5.0 mEq/L以上となった際には、やはりスピロノラクトンの投与を中止する


  • 経口カリウム吸着薬併用でのスピロノラクトン継続群とスピロノラクトン中止群で予後などの臨床経過を比較した文献は見当たらなかった

    • 経口カリウム吸着薬を併用しながらスピロノラクトンの投与期間をより長期化させる研究はある


  • 心機能が改善しない限りは永続的に内服を続けることが本来望ましいため、血清カリウム値5.0 mEq/L以下となった際には、減量再開などを考慮する





【心不全に対するスピロノラクトンの適応】

主に、RALES studyに端を発する形で、「LVEF<35%の有症状の心不全に対しては、禁忌が無い限りMRAの投与が推奨される」こととされています


しかしながら、EFの落ちていない、いわゆるHFpEFについては、予後改善の効果が明確となってはいないことがTOPCAT studyにより示されました



【スピロノラクトンと経口カリウム吸着薬の併用は可?】

そもそも今回の患者さんについて、EFが保たれており、体液貯留も無かったことからスピロノラクトンの適応について慎重に考える必要があるかもしれません。


しかしながら、本症例から臨床的疑問が生じ、一番知りたかったのは、


スピロノラクトン内服で高カリウム血症となった場合、カリウム降下剤を飲んでまで継続すべき?


ということでした。


そして結論としては、スピロノラクトン内服で高カリウム血症となった場合、カリウム降下剤を飲んでまで継続すべき=予後改善が期待できるかどうかについて、明示された文献を見つけることが出来ませんでした。


Lancetから、「経口カリウム吸着薬を併用してスピロノラクトンを出来る限り長く投与し続ける」研究が発表されており(患者背景は心不全ではなくCKD+治療抵抗性高血圧症ですが)、経口カリウム吸着薬を併用してでもスピロノラクトンの効果を得たいという動機が存在していることは確かですね。


ただし、高齢者においてはポリファーマシーによる影響や、致死的低カリウム血症に陥るリスクについてなども考慮した効果判定が必要になりそうです。


もしもそのような研究がすでにあるのであればどなたか教えていただけると嬉しいです。



【参考文献】




 
 

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