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  • 執筆者の写真kenji kawara

L-dopa投与中のパーキンソン病患者のwearing-offに対してとるべき対応は?


訪問診療の患者さんの中には、外来通院でパーキンソン病の治療を行っていたが、通院困難となり訪問診療に切り換えるという方が少なくありません。


もちろん、病院時代のご処方のおかげで運動症状なく経過されている方もいらっしゃいますが、中には、起床後や夜間に無動症状が顕著となってしまうwearing-off現象が見られる方もいらっしゃいます。


このようなwearing-offを呈した患者さんに対する対応方法について調べてみました。


※実例をもとに、架空の症例提示をしています


【症例】

76歳男性

パーキンソン病の診断に対してドパコール配合錠内服中



【既往歴】

高血圧症



【内服歴】

ドパコール配合錠L100 3T3X

ドプス100mg3T3X

アムロジピン5mg1T1X



【Clinical Question】

wearing-off現象を呈した際にとるべき対応は?



【私的結論】

患者さんにとって侵襲の低い介入から始め、以下の順に効果を確認しながら進める


①食事療法

食事によって摂取されたタンパク質が脳内のレボドパ輸送と競合することがあるので、内服を食前に変更してみる


②L-dopaの増量/投与時間調整

L-dopaの投与量が100mg, 200mgなど十分でない可能性がある場合には、400mg, 500mg程度まで増量する。


内服方法については、1回に200mgを超えて内服するのではなく、4,5回に分けて内服する


③ドパミンアゴニストの追加

②までで症状の改善が無い場合には、ドパミンアゴニストの投与を検討する


④COMT阻害剤の追加

③までで症状の改善が無い場合には、エンタカポンなどCOMT阻害剤の投与を検討する


⑤COMT阻害剤の追加

④までで症状の改善が無い場合には、エフピーなどMAOB阻害剤の投与を検討する


【wearing-offの疫学】

パーキンソン病と診断され治療が開始された方のうち、5年間で50%もの方がwearing-offを呈すると言われています


従って、症状の進行に伴って、病院からいただいた処方だけでは十分でなくなることも多く、漫然と経過観察を続けないためにも、上記のような知識を持ち、適切なタイミングで専門医へ協力を仰ぐ必要があります


【気になるのは、ドパミン付随薬の使い分け】

L-dopaに付随して投与を検討する薬剤については以下のものが存在しています


  • ドパミンアゴニスト

  • COMT阻害剤

  • MAOB阻害剤

  • イストラデフィリン

  • ゾニサミド


これらには、患者背景による使い分けの基準やエビデンスレベルの違いはあるのでしょうか?


①患者背景による使い分け

参考文献では、高齢者や認知症患者ではドパミンアゴニストの副作用(幻視、起立低血圧、傾眠など)を生じやすく、エビデンスの蓄積もないため、投与には注意を要するとのことでした


②エビデンスレベルの違い

各薬剤にエビデンスレベルの違いがあり、投与順序はエビデンスレベルの強弱によって判断されるようです。


  • エビデンスレベル2A:ドパミンアゴニスト

  • エビデンスレベル2B:COMT阻害剤

  • エビデンスレベル2C:MAOB阻害剤, イストラデフィリン, ゾニサミド


もっとも、このあたりの薬剤の使い分けについては、専門医レベルの経験や知識がものを言う領域に踏み込んでもいるので、ご協力を仰ぐのが適切なのかもしれません。



【日本神経学会のアルゴリズム】

最後に、ガイドラインに分かりやすいフローチャートが掲載されていたので、引用させていただきます


【参考文献】




#パーキンソン病 #レボドパ #ドパミンアゴニスト #COMT阻害薬 #MAOB阻害薬 

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