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不眠に対する睡眠薬の使い分けは?

執筆者の写真: kenji kawarakenji kawara

更新日:2021年4月29日


不眠に悩み、睡眠剤を内服している患者さんは非常に多く、私の体感では5人に1人くらいは何らかの睡眠剤を内服しているような印象があります。


それだけに、不眠に対する睡眠薬の使い分けについては適切な判断が求められる機会が多いことでしょう


※今回、症例の提示はありません


【Clinical Question】

不眠に対する睡眠薬の使い分けは?



【私的結論】

  • 薬物療法については睡眠障害の類型に沿って可能な限り単剤での治療を検討する


  • 入眠困難をもち、高齢者や認知機能障害を持つ患者にはロゼレムまたはベルソムラを第一選択として試してみる

    • ただしロゼレムは効果発現まで2-4週間と時間がかかり、効果も弱い


  • 中途覚醒があり、高齢者や認知機能障害を持つ患者にはベルソムラを第一選択として試してみる

    • 併存疾患によってはトラゾドンの使用も考慮される


  • 若年成人などリスクが低ければ非BDZ系薬剤を第一選択として考慮する


  • up to date掲載のアルゴリズムでは非BDZを含む、ベンゾジアゼピン受容体作動薬の高齢者に対する投与はかなり慎重である

    • いわゆるベンゾジアゼピン系睡眠薬については記載すら無い



【不眠診療のエッセンス】

  • 薬物療法については類型に沿って可能な限り単剤での治療を検討する


以下、参考文献からの引用↓


⼊眠困難型、睡眠維持障害型(中途覚醒、早朝覚醒)に分類し、⼊眠困難型には消失半減期の短い睡眠薬、睡眠維持障害型には消失半減期がより⻑い睡眠薬が推奨されている

ただし、⼊眠困難と睡眠維持障害の両者を有する患者に対して、異なる半減期を有する複数の睡眠薬を併⽤することに科学的根拠はなく、むしろ副作⽤のリスクを⾼める可能性がある
  • 非ベンゾジアゼピン系睡眠薬は効果においてベンゾジアゼピン系睡眠薬と差がないものの、効果持続性については優れている


  • 単剤投与中にも関わらず、不眠の訴えが強い場合には、安易に増量/追加をせずに睡眠衛生指導(詳細は下記)や耐性の問題、せん妄や疾患に付随する不眠の可能性、認知⾏動療法の活⽤を検討する


  • 睡眠薬の多剤併用は原則的に避けるべきだが、どうしても併用が必要と考えられた際には、同系統での併用を避け別系統を組合わせる(非BZDとBZDなど)


  • 抗うつ薬(トラゾドンやミルタザピン)が不眠症に対して効果を発揮することがあるが、うつ症状を伴わない原発性不眠に対しての適応はないので使用には注意を要する



【具体的な薬剤リスト】



【睡眠衛生指導の具体的な内容】



【不眠の疫学】

不眠の有病率は60歳以上の男性で入眠困難7%, 中途覚醒23.1%, 早朝覚醒5.3%、60歳以上の女性では入眠困難8.5%, 中途覚醒19.9%, 早朝覚醒7.8%とありふれた症状であることがわかります


従って、症状の進行に伴って、病院からいただいた処方だけでは十分でなくなることも多く、漫然と経過観察を続けないためにも、上記のような知識を持ち、適切なタイミングで専門医へ協力を仰ぐ必要があります



【不眠の鑑別】

今回は、睡眠剤を使用している不眠患者の、睡眠剤の使い分けに焦点をあてましたが、もちろん、そもそも不眠の原因が何なのかを突き詰めて調べることがとても大切です。


以下に分かりやすかった図を引用させていただきます。



※「緩和ケアレジデントの鉄則」 医学書院



【参考文献】




#不眠 #ベンゾジアゼピン #非ベンゾジアゼピン #ロゼレム #ベルソムラ 

 
 

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